安全関係記事

板金加工機の安全装置と効果的な運用

株式会社小森安全機研究所 執行役員 営業部長 石井健太郎 


作業性と安全性を両立する。 ユニークな安全装置

小森安全機研究所は創業より67年間、つねに金属加工業の発展と安全に寄与する新しい製品を発表してきた。安全対策の実績は25,000件をゆうに超え、現存する安全装置は長いもので45年以上、作業者を陰ながら見守っている。
 長い間、プレス機械や鈑金加工機械の安全対策は、40年程前に施行された労働安全衛生規則に沿って行われてきた。しかし、40年の時間の中で対象になる加工設備の機構や設備の種類も大きく変わり、従来の規則にある安全装置や方法では安全の確保が難しい設備が増え始めた。一例を挙げると、光線式安全装置をプレスブレ-キに設置した場合だ(図1)。プレスブレーキは材料を保持し加工を行うことが多い、そのため身体または材料が光線式安全装置に反応し作業ができない。


 図1
 
 そんな中、2011年2月、厚生労働省より基発0218第2号 労働安全衛生規則の一部を改正する省令の施行などについてが通達された。この改正は日本の安全基準を国際規格の水準へ押し上げるためのもので安全装置の拡充や、安全対策の解釈変更などが含まれ、今まで安全対策が難しかった設備に適合する安全装置も制定された。この改正を受け、作業性と安全性を両立する、多くのユニークな安全装置が誕生している。その中から本稿では2点を紹介したい。
 

レーザ式プレスブレーキ用安全装置

プレスブレーキの自動化を問題なくできるのであれば一番良いのだが、作業の性質上プレスブレーキには自動化できない作業が多く存在する。そのため、作業者が操作し加工作業をするのであれば安全装置を検討していく必要があるが、今までは作業ができる安全装置がないという問題があった(図1)。
 レーザ式プレスブレーキ用安全装置はこの問題を解決することができる安全装置である(図2)。

 図2
 
ほかの安全装置との違いは上型と下型の間に身体の一部が挟まれる、挟まれ災害の防護に特化していることだ。 レーザ式プレスブレーキ用安全装置は上型の先端を監視し、スライドの状態により自動的に有効と無効を切り替える。これによりプレスブレーキで行うさまざまなワークに対応できる安全装置になっている。身体の一部を、上型付近まで安全に接近させることも可能だ。昨今では日本国内で使用できる、レーザ式プレスブレーキ用安全装置は10種程度までに増えた、とは言っても、選べる装置は1~2種類になることが多い。それは、レーザ式プレスブレーキ用安全装置の汎用性が低く、設置できるプレスブレーキと殷殷できないプレスブレーキがある製品が多いからだ。
 その中で大きな差別化をした製品が自社ブランド商品である「DSP-J型」である。DSP亅型の最大の特徴は高い汎用性だ。 DSP-J型は、現存する9割のプレスブレーキ汎用機に取り付けることができる。それはメーカーを問わず40年以上前に製造されたプレスブレーキはもちろん、マシンメーカーが現在販売している最新のプレスブレーキも含まれる。
 たとえば、40年前に製造されたプレスブレーキにDSP-J型を設置し仕様する。その数年後に機械を買い替えることになり、新型のプレスブレーキにDSP-J型を移設して使用する。そういったことも、もちろん可能であり、多くの実績がある。
 DSP-J型はさまざまなメーカーと型式、そして年式のプレスブレーキが存在する日本の板金工場に適した安全装置である。もちろん、国内での修理にも対応でき、末永く安心して使用できる製品になっている。
 

新しいエリアセンサ ロボットや自動加工機の防護
 

プレス機械だけでなく、多くの板金加工機でも自助化が進んでいるが、自動化すれば安全!と言う認識は改める必要がある。これは冒頭で述べた規則改正でも謳われている。特に、自動設備の稼働中に第三者が侵入し被災、また、停止している自動機内での作業中、作業者に気づかず、第三者が自動機を起動し被災(居残り災害)、この2つは実際の事故事例でもしばしば耳にする内容である。11年以降、多くの自動機の安全対策に係ってきたが、よく見掛ける安全対策は図3のパターン1のような構成の対策である。 
 図3のパターン1は第三者の侵入も防ぐ事が出来、リセットSWもある。しっかりと対策されている様に見えるが、フェンス外からの操作のみで再起動することができ、先ほど述べた居残り災害のリスクが付きまとう。
 図3のパターン2はどうだろうか。パターン2ではフェンス内部のリセットSW1とフェンス外のリセットSW2を押さない限り再起動はしない。これだけでも安全性は高まるが、リセットswにキーSWを採用し、キーはフェンス内侵入時に作業者に携帯させるなどの工夫で、安全性はさらに高くなる。

図3 
 
 ただし、この対策は多くの部材と手間がかかるエリアセンサ、パトライト、リセット用SW、SWが押されるまでエリアセンサの遮光状態を保持する保持回路の作成も必要だ。
 そこで紹介したいのがエリアセンサSLC型である(写真1)。このセンサはSWを2個用意するだけで、パターン2の対策が可能なる。2個の手動リセットSW用に保持回路を搭載し、センサ上部にパトライトも搭載している。手軽に質の高い安全対策を提供できるように開発された力作である。

 (写真1)
      ☆        ☆
 今回は2つの安全装置を、事例を交えてご紹介したが、この機会にぜひ、身近にある加工設備を安全と言う視点で見直してほしい。 日本の労働災害が1件でも多く減ることを願う。 
2018年5月 「板金加工」
「機械加工機の安全装置と効果的な運用」