安全関係記事

プレス現場の災害防止 第4回」
  大型プレス自動化の盲点

(株)小森安全機研究所 山田輝夫 (山田労働安全コンサルタント事務所 代表) 
 大型のプレス機械設備には、小型プレス機械にはない危険な状況が見受けられ、その安全性については充分な検討をしなければならない。一般的に大型プレス機械とはストレートサイドプレス機械で、少なくとも3000 kN を超えるような機械であり、金型をはじめ、製品や材料などは大きく、重量も重くなり。それらを搬入・搬出するクレーン・フォークリフト設備も大型になり、小型プレスの設備とは明らかに違いがある。 したがって、ひとたび操作を誤ると、すべてが大きな災害を引き起こす要因となってしまう。そして、その取扱は重量が大きいことから、自動化されているケースがほとんどである。その一方で、ひとたびトラブルになると金型を細かく調べなければならず、当然、金型をつけたまま、内部の検査をしなければならず、身体全体および一部が金型内に入ってしまい、非常に危険なりスクを負ってしまうのである。
 

1.大型設備の盲点

 
 大型プレス設備には、小型機にない安全装置の取扱いの問題が多くある。光線式安全装
置や両手操作式安全装置における安全距離。安全ブロックの使用、ホルスターがムービング
ボルスターとなっで移動できるもの、その他ホルスター上に人が簡単に乗り降りすることができてしまうことなど、小型機とは違う安全上加味しなければならないことがある。通常.C形フレームとの大きな違いは、光線式安全装置の光軸までの安全距離は、ホルスターの前後寸法のl/6Lbと。ホルスターの前面から光軸の中心までの距離を加算したものとなっている。また、両手操作式安全装置もCフレーム形と違いホルスターの前後寸法の1/6Lbにホルスター前面から押しボタンの中心の位置までの距離を考慮しなければならない。
 今回は大型プレスでよく取扱が問題となる安全ブロックに関係した災害事例を検証してみ
る。一般的に構造規格を満足し、光線式安全装置、両手操作式安全装置が取り付けられ、安全上はほぼ問題ないように見える機械でも、この大型のストレートサイドプレス機械は、床面とホルスター面が同じだったり、わずかな段差しかないものがほとんどで、ホルスター上に人が簡単に昇り降りができてしまうのである。そのため金型の取付、取外し、調整等を行う場合は安全ブロックを設け、スライドの不意の下降がないようにしなければならないとされている。しかし、作業者は光線式安全装亂両手操作式安全装置があり、一見何も問題がなく安全であるように見えてしまうのである。残念ながらホルスター上に昇る行動は非常に危険なことであり、安全ブロックを使用しないで作業をして災害が発生しており、プレス機械での死亡災害の原因のひとつにもなっている。また一方、大型設備のため、複数人で作業を
しなければならず、作業時、プレス機械の回りには多くの死角ができ、デッドスペースができてしまう。数台並んだ状況下では人の注意が届きにくくなり、思わぬ災害要因にもなってしまう。そのような場所での安全確認をどうするのか、大型設備には見えにくいところにも重要な問題が潜んでいる。そして、その安全対策として、大に安全を確認させるのか、機械側に安全を確認させるか、さまざまな方法が考えられる。しかし、安全上、人に任せてしまう安全管理は問題が多い。大はヒューマンエラーを起こしやすい。このことを考えれば、避けなければならない。大はそれぞれ、さまざまな錯覚、錯誤をしてしまったり、注意力に至ってはその継続性、方向性など複雑な問題を抱え、散漫になってまう。人はすべてをカバーしきれない。「ちょっと見るだけ」、「みんながいつもやっている」、「問題はない」など、勝手な自分の判断のもとに行動してしまう。その結果として重大な災害を引き起こしてしまうことが考えられる。
 


2.安全ブロックがなぜ使われないのか

 なぜ、安全ブロックは使われないのだろうか?先にも述べたが、「ちょっと見るだけ」、「みんながいつもやっている」。「問題はない」「自分は大丈夫」など。非常に危険であるという認識が薄れてしまうと、人的な要因や、安全ブロックの重量が重いことから、セットするのが面倒になってしまうのである。一度停止させると再起動させるのに時間がかかる。そうでなくても、段取り時間の短縮などが要求され、手抜き作業したいところだし、できるところでもある。また、安全ブロックを使わなけばできない作業ではないといったハード的な問題もあり、形式的な収付だけで、あまり使われていないのが実情である。そして何よりも安全ブロックは、インターロック機構を兼ね備えなければならず安全プラグといっしょに使用され、プレス機械の電気回路が停止状態となっていなければならないことから、なおさら使われなくなっている。


 
 

3.まとめ

 大型プレス機械設備の事故は、加圧力が大きく、また設備が大きいので人の体が簡単に設備の中に入ってしまうため、ひとたび災害が起きると、重大な災害に結びついてしまう。そのため、安全ブロック、光線式安全装置、両手操作式安全装置、ガード、安全囲いなどの対策が必要である。ガードに至ってはそのガードの開閉のためのドアのインターロック、キーの管理など、より細かな対策が求められる。また、ガードとしての安全柵には、危険限界との距離、つまり安全柵を置く位置によって柵のピッチが決められている、その限界図を図1に示す。しかし、ハード的に満足さ才1たとしても、ソフト的。人的な対応要囚、(どうやって使わせる、使わなければならない)の解決もしなけれぱならず総合的に考えることが必要である。最近、国際安全規格を満足しているレーザースキャナーが、安全装置メーカーから、大型プレス機械の安全装置として紹介されており、この装置が安全ブロックの取扱いの解決策になるものと思われる。そして何よりも、トラブルを起こさない金型の製作、加工技術力の向上も必要である。

 

4.プレス機械構造規格等

 次に、安全ブロックに関係する関係法令を記‘載する。
 安全衛生規則第131条2(スライドの下降による危険の防止)
 事業者は、動力プレスの金型の取り付け取外し又は調整の作業を行う場合において 当該作業に従事する労働者の身体の一部が危険限界に入るときは、スライドが不意に下降することによる労働者の危険を防止するため、当該作業に従事する労働者に安全ブロックを使用させる等の措置を講じなければならない。

2.前項の作業に従事する労働者は同項の安全ブロックを使用する等の措置を講じなければならない。
プレス機械構造規格(安全ブロック)第6条
動力プレスは、スライドが不意に下降することを防止することができる安全ブロックを備え、かっ、当該安全ブロックの使用中はスライどを作動させることができないようにするためのインターロック機構を有するものでなければならない。
 
(安全プラグ等)第33条
機械プレスブレーキ以外の機械プレスでボルスターの各辺の長さが1500ミリメートル未満のもの又はダイハイトが700ミリメートル未満のもの及び機械プレスブレーキにあっては、第6条の規定にかかわらず、安全ブロックに代えて安全プラグ又はキーロックとすることができる。
2、前項の安全プラグは、操作ステーションごとに備えられているものでなければならな
 い。
3.第一項のキーロックは、主電動機への通電をしや断することができるものでなければ
 ならない。
(液圧プレスの安全ブロック)第38条
液圧プレスに備える安全ブロックは、スライド及び上型の自重を支えることができるものでなければならない。

プレス成型加工
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