工場の安全強化欧州並みに
株式会社小森安全機研究所 会長 小森雅裕
2011年7月、労働の安全基準を定める「労働安全衛生規則」の一部が改正され、作業者のための安全対策がより厳しくなった。
日本は欧州に比べると生産性やコスト面から労働者安全対策の優先順位が低いと言われている。ねぱり強く啓発活動に取り組み、労働災害減少につなげていきたい。
規制改正で一歩前進
今回の労働安全衛生規則の改正では、工作機械だけでなく数値制御(NC)テーブルなどストローク喘を持つ機械全般に人との衝突を防ぐ安全柵を設置する対策を取ることや、プレスブレーキ用安全装置の取り付け義務化などが盛り込まれた。規則で改正された項目は11年7月1日からすぐに実施しなければならないことになっている。
確かにここ10年ほどで労働災害は大きく減少したが、直近では10年~12年と3年連続で増加している。労働安全術生規則改正は事故減少に向けた大きな一歩ではあるが、すぐに事故が減るとはいえないと思われる。
また最近、規則通りに安全対策を施しても世界基準で見れば設置方法が十分でない例があると分かった。先日、当社が取り扱っているイタリアの安全機メーカーの経営者が来日し、ユーザーである日本企業の工場を訪問した時のことだ。現場に入ったイタリアの経営者は「危なくて、ここにはいられない」と工場の外に出てしまった。そして「いくらプレス機械の周りに柵を置いても人が行き来できるほどのすき閧が空いているようでは大変危険だ」と指摘した。
コンサルカ高める
具体的にどのように安全柵を取り付けるのかまで掘り下げないと、これからの安全対策には結びついていかないのではないか。作業環境の安全対策に厳しい欧州企業から見ると、日本はまだ遅れていると気づかされた。特にわれわれ供給側が果たすべき役割は大きく、コンサルティング機能を高めていかなければならない。
実は当社はもともとプレス加工業で創業。ある日、社員として働いていた身内がプレス作業中に事故で指を失った。創業者で当時社長だった父は一度会社をたたみ「事故の教訓を生かし、作業者が安全に働くための装置を作る」と決意。
プレス機械向けを中心とした安全装置メーカーとして再出発した。この経緯があるだけに安全に対する思いは人一倍強い。今後、熟練工が第一線を退き、若い人たちへの世代交代が進む。指導者がいなくなる前の今こそ、より一層現場の安全対策が求められると感じている。国や業界団体と連携しながら災害発生件数を欧州と同レベルまで減少させ、日本の製造現場における作業環境が世界標準になるよう責任を果たしていきたい
小森雅裕
73年(昭48)慶大法卒。
75年小森安全機研究所入社、
88年社長、
06年から現職。現在、建設業労働災害防止協会監事、労災保険情報センター監事、日本鍛圧機械工業会監事を務める。東京都出身、62歳
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2013年4月 「日刊工業新聞」 |
「オピニオン:労働安全強化 欧州並みに」 |